古文対策問題 068(大鏡「道長の栄華」長文)
【本文】
この道長、父の太政大臣、兄たちを次々に送りて、ついに一人天下を執りて、世に並ぶ者なき栄華を極む。
その頃、春の夜、月の光いと清くて、道長、池のほとりにて宴を催し、御殿の人々と和歌を詠み交わす。
道長、盃を手に取りて、「この世をば我が世とぞ思ふ」と詠めば、座に侍る人々、皆うち驚き、時の権勢のほどを語り合ふ。
その後、道長の子孫も高き位につきて、いよいよ家の盛んなるを世の人々羨みき。
しかれども、老いの身となり、世の移り変わりを思ふとき、道長もまた無常を感じて涙ぐみけるとかや。
【現代語訳】
この藤原道長は、父である太政大臣や兄たちを次々に亡くして、ついに一人で天下を治め、世に並ぶ者のない栄華を極めた。
そのころ、春の夜、月の光がたいへん清らかで、道長は池のほとりで宴を開き、御殿の人々と和歌を詠み合った。
道長が盃を手に取り「この世をば我が世とぞ思ふ」と詠むと、座にいる人々は皆驚き、時の権勢の大きさについて語り合った。
その後も道長の子孫は高い地位に就き、ますます家が栄えたことを世の人々はうらやましがった。
しかしやがて道長も年を重ね、世の移り変わりを思う時、無常を感じて涙ぐんだということである。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:未詳。平安後期の歴史物語。
- 作品:『大鏡』。藤原氏の繁栄と盛衰を語る。
- 藤原道長:平安中期の摂関政治の頂点に立った人物。
- この世をば我が世とぞ思ふ:道長の有名な和歌(原歌:「この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」)。
重要古語・語句:
- 栄華:権力・名誉の盛んなこと。
- 詠む:和歌を作る。
- 侍る:お仕えする、座にいる。
- いよいよ:ますます。
- 無常:この世のはかなさ。
【設問】
【問1】道長が「この世をば我が世とぞ思ふ」と詠んだ場面の状況として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 春の夜、池のほとりで宴を開き和歌を詠み交わした
- 戦の最中に詠んだ
- 旅の途上で詠んだ
- 子どもたちと田を耕しながら詠んだ
- 都を離れて詠んだ
【問1 正解と解説】
正解:1
「春の夜、池のほとりにて宴を催し…和歌を詠み交わす」と本文に明記されている。
【問2】道長の和歌「この世をば我が世とぞ思ふ」が象徴しているものとして最もふさわしいものを一つ選べ。
- 圧倒的な権勢と時代の頂点
- 貧しい生活
- 戦乱の苦しみ
- 家族の絆
- 自然の美しさ
【問2 正解と解説】
正解:1
権勢・栄華の絶頂を象徴する和歌である。
【問3】道長が晩年に感じたこととして本文内容に最も近いものを一つ選べ。
- 無常観に涙ぐんだ
- ますます栄華を誇った
- 都を離れて隠棲した
- 戦に出た
- 新しい和歌を詠み続けた
【問3 正解と解説】
正解:1
「無常を感じて涙ぐみける」と本文に明記されている。
【問4】『大鏡』の物語として最もふさわしい特徴を一つ選べ。
- 歴史物語として栄華と無常を描く
- 恋愛物語である
- 旅日記が中心である
- 説話集である
- 庶民の暮らしを描く
【問4 正解と解説】
正解:1
『大鏡』は歴史物語として、藤原氏の栄華と無常観の両方を描く。