古文対策問題 066(宇治拾遺物語「こぶとり爺さん」長文)
【本文】
昔、ある山里に、大きなこぶを持つ翁ありけり。ある夜、山へ薪取りに行きて、木の下に休みけるに、いつしか眠り入りぬ。
その夜、山の中に鬼たち集まり、酒宴を開き、舞を舞ひて大いに騒ぎけり。翁、目覚めてこれを見て驚きたれど、鬼どもに舞を勧められ、恐る恐る舞いを舞ひければ、鬼たち大いに喜び、「この翁、よく舞うものかな」とほめたたえぬ。
そして鬼の大将、「この舞の礼に、このこぶを預かる」と言ひて、翁のこぶを取り去りて山を去りけり。
翌朝、翁はこぶがなくなり、うれし涙を流しながら里へ帰りぬ。
これを聞きし隣の翁も、自らのこぶを取らんと山へ行きて、同じように鬼の前で舞を舞ふ。しかし鬼たちは「前にもらったこぶを返す」と言ひて、隣の翁のこぶにもう一つのこぶを付けてしまい、翁は泣く泣く帰りたり。
【現代語訳】
昔、ある山里に大きなこぶを持ったおじいさんがいた。ある夜、山へ薪を取りに行き、木の下で休んでいると、いつの間にか眠り込んだ。
その夜、山の中で鬼たちが集まって酒宴を開き、舞を舞って大騒ぎしていた。おじいさんが目を覚ましてこれを見て驚いたが、鬼たちに舞を勧められ、恐る恐る舞うと、鬼たちはとても喜び、「このおじいさんはよく舞うものだ」と褒めた。
そして鬼の大将が「この舞のお礼に、このこぶを預かろう」と言って、おじいさんのこぶを取り去って山を去った。
翌朝、おじいさんはこぶがなくなり、うれし涙を流して里へ帰った。
これを聞いた隣のおじいさんも自分のこぶを取ってもらおうと山へ行き、同じように鬼の前で舞を舞った。しかし鬼たちは「前にもらったこぶを返そう」と言って、隣のおじいさんのこぶにもう一つこぶを付けてしまい、おじいさんは泣きながら帰った。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:未詳。鎌倉時代の説話集。
- 作品:『宇治拾遺物語』。民間伝承や説話を多く含む。
- 鬼:昔話や説話にしばしば登場する超自然的存在。
- 舞:踊り。
重要古語・語句:
- 翁:おじいさん。
- 預かる:引き受ける、預かる(この場合は取り去る意)。
- ほめたたう:ほめる。
- 泣く泣く:泣きながら。
【設問】
【問1】最初の翁がこぶを取ってもらえた理由として本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 鬼たちに舞を披露し喜ばせたから
- 力比べに勝ったから
- 宝物を鬼に差し出したから
- 山で迷子になったから
- 鬼と親友だったから
【問1 正解と解説】
正解:1
「翁の舞を鬼たちが喜び、舞の礼としてこぶを取った」とある。
【問2】隣の翁が同じように鬼の前で舞を舞った結果どうなったか、本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- こぶがもう一つ増えてしまった
- こぶを取ってもらえた
- 鬼に褒美をもらった
- 鬼と友達になった
- 都に招かれた
【問2 正解と解説】
正解:1
「隣の翁のこぶにもう一つのこぶを付けてしまい」と本文に明記されている。
【問3】この話から学べる教訓として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 人のまねをしてもうまくいくとは限らない
- 鬼を恐れてはいけない
- 山で眠るのは危険である
- 酒宴には必ず参加すべきである
- 舞を学ぶべきである
【問3 正解と解説】
正解:1
「同じようにまねても思い通りにはならない」という教訓が物語の主題である。
【問4】『宇治拾遺物語』やこの話の特徴として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 庶民的な説話・伝承を多く集め、教訓やユーモアを含む
- 王朝の歴史を記録した物語である
- 恋愛譚が中心である
- 宗教的な教えが中心である
- 歌物語として詠まれることが多い
【問4 正解と解説】
正解:1
庶民的な説話・伝承、教訓、ユーモアという特徴がよく表れている。