古文対策問題 063(竹取物語「かぐや姫の昇天」長文)
【本文】
八月十五夜、月の光いと明かき夜、かぐや姫のもとに天人たち、雲の中より下り来たりぬ。翁、媼、姫を守らんとて御殿の戸を固く閉ざし、家人みな弓矢を持ちて守りけれど、天人の力、いとも及ばず。
姫、泣く泣く翁・媼に別れを告げて、「この世はかりそめの宿りなれば、心苦しく候ふ。かならずまた参らむ」と言ひおく。
天人の差し出す衣を着せられて後は、悲しみも悩みもすべて忘れ、月の都へと昇りゆく。
翁・媼は、姫の姿の見えぬ後、しばしものも言はで、涙に暮れぬ。
その夜、村人たちは天に昇る光を仰ぎ見て、「かぐや姫の昇天なり」と語り合ひ、皆袖をぬらしけり。
【現代語訳】
八月十五夜、月の光がとても明るい夜、かぐや姫のもとに天人たちが雲の中から降りてきた。翁や媼は姫を守ろうと御殿の戸を固く閉じ、家の人々も弓や矢を持って守ったが、天人の力にはかなわなかった。
かぐや姫は泣きながら翁と媼に別れを告げ、「この世は仮の宿りなので心苦しいです。必ずまたお会いしましょう」と言い残した。
天人に差し出された羽衣を着せられると、悲しみも悩みもすべて忘れてしまい、月の都へ昇っていった。
翁と媼は、姫の姿が見えなくなったあと、しばらく何も言わず、涙に暮れた。
その夜、村人たちは天に昇る光を見上げて「あれはかぐや姫が天に昇るのだ」と語り合い、みな袖をぬらした。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:未詳。平安前期の物語文学。
- 作品:『竹取物語』。日本最古の物語文学とされる。
- 八月十五夜:旧暦八月十五日、十五夜の月見。
- 羽衣:天人がかぐや姫に着せた天上の衣。
重要古語・語句:
- いとも及ばず:全くかなわない。
- かりそめの宿り:仮の住まい、一時の世。
- 袖をぬらす:涙で袖をぬらす。
- 昇天:天に昇ること。
【設問】
【問1】かぐや姫が昇天する夜、翁や媼がとった行動として最も本文に近いものを一つ選べ。
- 姫を守ろうと御殿の戸を閉ざし、弓矢で天人を防ごうとした
- すぐに天人に姫を渡した
- 宴会を開いて別れを祝った
- 姫の代わりに自分たちが昇天しようとした
- 姫と一緒に都に行こうとした
【問1 正解と解説】
正解:1
「戸を固く閉ざし、家人みな弓矢を持ちて守りけれど」と本文に明記されている。
【問2】かぐや姫が「羽衣」を着せられた後に起こったこととして本文内容に合うものを一つ選べ。
- 悲しみや悩みをすべて忘れてしまった
- 涙が止まらなかった
- 地上に残る決心をした
- 翁と媼を連れていった
- 自分だけ家に残った
【問2 正解と解説】
正解:1
羽衣を着ると悲しみや悩みもすべて忘れて昇天した、と本文に書かれている。
【問3】かぐや姫が翁・媼に別れを告げるときの言葉として、本文に即して正しいものを一つ選べ。
- 「この世は仮の宿り、必ずまた参りましょう」
- 「これから都に向かいます」
- 「もう二度と会えません」
- 「地上に残ることにします」
- 「天人についていくのは嫌です」
【問3 正解と解説】
正解:1
「この世はかりそめの宿りなれば、心苦しく候ふ。かならずまた参らむ」と述べている。
【問4】かぐや姫の昇天後、村人たちの様子として本文内容に合うものを一つ選べ。
- 天に昇る光を見上げ、皆が涙した
- 都に姫を探しに行った
- 宴会を開いて歌を詠んだ
- 姫の像を作って祭った
- 翁と媼の家に集まって励ました
【問4 正解と解説】
正解:1
村人たちは「天に昇る光を仰ぎ見て…皆袖をぬらしけり」とある。