古文対策問題 062(枕草子「雪の朝」長文)
【本文】
雪の朝、御殿の庭一面に白く積もりて、木々の枝にも花のごとく咲きかかりたるさま、いとをかし。
清少納言、御簾の内より、雪の光に照り映ゆる庭を眺めて、「この雪のけしき、いと珍し」と思ひ給ふ。
殿上人、女房たち、皆いそぎ起き出でて、雪を眺め、枝より雪を取りては、手のひらにのせて笑ひさざめく。
その日、帝より「雪の朝のけしきを詠め」との御命ありて、清少納言、すぐに紙と筆を取りて、
「雪のうちに咲きたる花の色に似て、雪にまがふぞ梅が香の袖」と詠みて奏しけり。
帝は「まことにめでたき歌なり」と仰せられ、宮中に春の気配漂ふ朝となりぬ。
【現代語訳】
雪の朝、御殿の庭一面に雪が白く積もり、木々の枝にもまるで花が咲いたように雪がかかっていて、とても美しい。
清少納言は御簾の内から、雪の光に照り映える庭を眺めて、「この雪の景色はとても珍しい」と思った。
殿上人や女房たちも皆急いで起きてきて、雪を眺め、枝から雪を取っては手のひらにのせて笑い合っていた。
その日、帝から「雪の朝の景色を詠め」というお命があり、清少納言はすぐに紙と筆を取り、
「雪のうちに咲きたる花の色に似て、雪にまがうぞ梅が香の袖」と詠んで奏上した。
帝は「本当に素晴らしい歌だ」とお褒めになり、宮中には春の気配が漂う朝となった。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:清少納言。平安中期の女流随筆家。
- 作品:『枕草子』。四季折々の宮中生活を描く。
- 帝:天皇。
- 御簾:御殿のすだれ。内と外を隔てる。
重要古語・語句:
- いとをかし:とても趣深い、美しい。
- いそぎ:急いで。
- さざめく:賑やかに話す、笑い合う。
- まがふ:見間違える、まぎれる。
- 袖:着物のそで(和歌ではしばしば恋や春の象徴)。
【設問】
【問1】雪の朝の宮中の情景として本文内容に最も近いものを一つ選べ。
- 庭や木の枝に雪が積もり、花が咲いたような美しさ
- 激しい嵐で皆が家にこもっていた
- 桜が満開の春の朝だった
- 秋の紅葉が庭を彩っていた
- 雨で外に出られなかった
【問1 正解と解説】
正解:1
「庭一面に白く積もりて、木々の枝にも花のごとく咲きかかりたるさま」と明記されている。
【問2】清少納言が詠んだ和歌の内容として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 雪の中に咲いた花のような美しさを詠んだ
- 夏の暑さを詠んだ
- 秋の月を詠んだ
- 都のにぎわいを詠んだ
- 旅立ちの別れを詠んだ
【問2 正解と解説】
正解:1
「雪のうちに咲きたる花の色に似て」とあり、雪と花(梅)を重ねた美しさを詠んでいる。
【問3】帝(天皇)の反応として本文内容に最も近いものを一つ選べ。
- 和歌を「めでたき歌なり」と褒めた
- 特に感想を述べなかった
- 和歌を訂正させた
- 雪を嫌がった
- 和歌の意味を尋ねた
【問3 正解と解説】
正解:1
「まことにめでたき歌なり」と賞賛した、と本文に記されている。
【問4】本文を通して枕草子に特徴的な感性として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 日常の情景を美しく、趣深くとらえる感性
- 武勇を称賛する心
- 宗教的厳しさを強調する姿勢
- 戦乱の苦しみを描く視点
- 恋愛の駆け引きを描く視点
【問4 正解と解説】
正解:1
季節の変化や日常の情景を「をかし」と感じ取る美意識が枕草子の特徴である。