漢文対策問題 006(『世説新語』より 苦い李)

本文

王戎七歳、嘗与諸小児遊。看道辺李樹多子折枝、諸児競走取之、唯戎不動。人問之、答曰、「樹在道辺而多子、此必苦李。」取之信然。

【書き下し文】
王戎(おうじゅう)七歳(ななさい)にして、嘗(かつ)て諸(もろもろ)の小児(しょうに)と遊びき。道辺(どうへん)の李樹(りじゅ)の子(み)多くして枝を折るを看(み)るに、諸児は競ひ走りて之(これ)を取るも、唯(た)だ戎のみ動かず。人、之を問ふに、答へて曰く、「樹、道辺に在りて子多し、此(こ)れ必ず苦き李なり。」と。之を取りて信(まこと)に然(しか)り。

【現代語訳】
王戎が七歳の時、かつて多くの子供たちと遊んでいた。道端のすももの木に実がたくさん生って、枝が折れそうになっているのを見ると、他の子供たちはみな競って走って行ってそれを取ったが、ただ王戎だけは動かなかった。ある人がその理由を尋ねると、(王戎は)答えて言った、「木が道端という誰でも通る場所にあるのに、実がたくさん残っている。これはきっと苦いすももに違いない。」と。(誰かがその実を)取って確かめてみると、本当にその通りであった。

【問題】

「唯戎不動」とあるが、王戎が一人だけ動かなかったのはなぜか。その推論の根拠として最も適当なものを次の中から一つ選べ。

  1. 以前に同じ木のすももを食べて、苦い思いをした経験があったから。
  2. 道端のものを勝手に取るのは行儀が悪いと、親から固く言われていたから。
  3. 走ってすももを取りに行くのは子供っぽいと考え、一人だけ冷静に行動したから。
  4. 道端という便利な場所にあるにも関わらず実が多く残っている状況から、美味しくないに違いないと判断したから。
  5. すももの色がまだ青く、熟していないのを遠くから見抜いていたから。
  6. 他の子供たちが苦いすももを食べて驚く様子を見て、楽しもうとしていたから。
  7. 自分は他の子供たちとは違うのだということを、大人たちに見せつけたかったから。
  8. 枝が折れそうになっているのを見て、木の下に行くと危険だと判断したから。
  9. すももがあまり好きではなかったので、取りに行く気になれなかったから。
  10. きっと誰かが罠を仕掛けているに違いないと、用心深く疑っていたから。
【正解と解説】

正解:4

【覚えておきたい知識】

重要句法:限定形「唯(ただ)~のみ」

重要単語

背景知識:『世説新語』と王戎

世説新語(せせつしんご)』は、後漢末から東晋にかけての著名な知識人や貴族たちの、気の利いた逸話や興味深い言動を集めた短編集。文学・徳行・言語など様々なジャンルに分けられ、登場人物たちの個性や人柄を生き生きと伝えている。王戎(おうじゅう)は、その中でも特に有名な「竹林の七賢(ちくりんのしちけん)」の一人。政治家・武人として活躍する一方、幼い頃からこの話のように、物事の本質を見抜く並外れた知性を持っていたと伝えられる。

レベル:共通テスト対策|更新:2025-07-23|問題番号:006