中級編:伝聞と引用のテクニック 〜接続法I式(間接話法)〜
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前回は、非現実の世界を語る「接続法II式」を学びました。今回は、もう一つの接続法である「接続法I式(Konjunktiv I)」を学びます。この接続法I式の主な役割は、他の人の発言や文章の内容を、話し手が客観的な距離を保って伝える「間接話法(伝聞)」です。「彼は〜だそうだ」「新聞によれば〜とのことだ」といった表現で、主にニュースや新聞などの書き言葉で使われる、格調高い文体です。
接続法I式の作り方
接続法I式は、動詞の原形の語幹に、特別な人称語尾を付けて作ります。
接続法I式の活用語尾
-e, -est, -e, -en, -et, -en
主語 | `kommen` (来る) | `sein` (〜である) ※最重要 |
---|---|---|
ich | komme | sei |
du | kommest | seist |
er/sie/es | komme | sei |
wir | kommen | seien |
ihr | kommet | seiet |
sie/Sie | kommen | seien |
※`ich`, `wir`, `sie/Sie`の形が現在形と同じになる動詞では、区別するために代わりに接続法II式(`würde`など)が使われるのが一般的です。
間接話法での使い方
接続法I式は、`dass`を使わずに、他者の発言を客観的に引用する際に使われます。
例文で直説法と接続法I式を比較しよう
直接の発言:
Er sagt: "Ich bin krank." (彼は「私は病気です」と言います。)
`dass`を使った文 (事実として報告):
Er sagt, dass er krank ist. (彼は病気だと言っています。)
接続法I式を使った文 (客観的な伝聞):
Er sagt, er sei krank. (彼は病気だとのことです。) - 話し手はその真偽を保証していない
過去の出来事を伝聞で表す場合は、助動詞 `haben` または `sein` を接続法I式の形にします。
Der Politiker sagte, er habe nichts davon gewusst. (その政治家は、それについて何も知らなかった、と述べた。)
今回のまとめ
- 接続法I式は、主に書き言葉で、他者の発言を客観的に伝える「間接話法」で使われる。
- 動詞の原形の語幹に `-e, -est, -e...` といった語尾を付けて作る。
- 特に `sein` の接続法I式 `sei` は非常に頻繁に使われる。
日常会話で積極的に使う機会は少ないかもしれませんが、ニュースや新聞を読む際には、この接続法I式を知っているかどうかが、内容を正確に理解する上で大きな差となります。