ウルトラ先生のエスペラント語教室

第2章 第2節 第3項: 前置詞と対格の不思議な関係

前置詞の後ろは対格不要…? あれ、例外もあるの?

前の項で、対格 -n は主に他動詞の目的語(~を)につく、と学んだね。そして、esti の後ろや、目的語を取らない自動詞の後ろにはつかない、ということも確認した。

では、「~の上に (sur)」「~の中に (en)」「~と一緒に (kun)」といった前置詞の後ろはどうなるんだろう?

基本ルール:前置詞の後ろは対格不要!

原則として、ほとんどの前置詞の後ろにくる名詞や代名詞には、対格の -n はつきません。 前置詞自体がその言葉の役割(場所、時間、関係など)を示してくれているからです。

  • La kato dormas sur la tablo. (猫はテーブルの上寝ている。) (tablon ではない)
  • Mi parolas kun mia amiko. (私は友達話す。) (amikon ではない)
  • La libro estas en la kesto. (本は箱の中ある。) (keston ではない)

(paroli - 話す, kesto - 箱)

「なーんだ、簡単じゃん!」と思ったかな? うん、基本はそうなんだ。でもね、エスペラントには、このルールに一つだけ、面白い「例外」というか「特別な使い方」があるんだよ。

特別ルール:方向・移動の到達点を示すときは対格 -n が必要!

場所を表す前置詞(en - ~の中に, sur - ~の上に, sub - ~の下に, apud - ~のそばに, antaŭ - ~の前に, post - ~の後ろに など)の後ろの名詞に対格の -n をつけると、「~へ」という方向や移動の到達点を示す意味になるんだ!

言葉で説明するより、例を見た方が分かりやすいね。比べてみよう!

場所 vs 方向 (sur - ~の上に/~の上へ)

La kato sidas sur la tablo.

猫はテーブルの上座っている。

(場所を示しているので -n はつかない)

La kato saltas sur la tablon.

猫はテーブルの上ジャンプする。

(テーブルの上「へ」という方向・到達点を示すので -n がつく! salti - ジャンプする)

場所 vs 方向 (en - ~の中に/~の中へ)

Mi estas en la domo.

私は家の中います。

(場所を示しているので -n はつかない)

Mi iras en la domon.

私は家の中行きます。

(家の中「へ」という方向・到達点を示すので -n がつく!)

場所 vs 方向 (sub - ~の下に/~の下へ)

La pilko estas sub la lito.

ボールはベッドの下あります。

(場所。 lito - ベッド)

La hundo kuras sub la liton.

犬はベッドの下走っていきます。

(方向。 kuri - 走る)

「方向の対格」のポイント

  • この対格 -n は、主に移動を表す動詞 (iri - 行く, veni - 来る, kuri - 走る, salti - 跳ぶ, meti - 置く など) と一緒に使われることが多いよ。
  • 場所を表す前置詞 (en, sur, sub, apud, antaŭ, post など) とセットで使われるのが基本だよ。
  • 方向を示す前置詞 al (~へ) を使う場合は、al 自体が方向を示しているので、その後ろに対格 -n は不要だよ。
    • Mi iras al la urbo. (私は町へ行く。)
    • Mi iras al la urbon.
    • Mi iras en la urbon. (私は町の中へ行く。)

    al la urbo は単に「町(の方)へ」という方向を、en la urbon は「町の中へ入っていく」というニュアンスをより具体的に示すんだ。

  • 時間や期間を表すときにも対格が使われることがあるけど、それはもっと先のレベルで学ぼうね!

まとめ:前置詞の後ろは対格不要、ただし「方向」には注意!

これで対格 -n の基本的な使い方は大体分かったかな?

  1. 他動詞の目的語には -n をつける。
  2. 自動詞の後や estas の後ろにはつけない。
  3. 前置詞の後ろにも基本的にはつけない。
  4. でも、場所を表す前置詞の後ろで「方向・移動の到達点」を示すときは、特別に -n をつける!

この「方向の対格」は、エスペラントをより豊かに、そして正確に表現するための便利な道具なんだ。少しずつ例文に触れて、感覚をつかんでいこうね!