ページ105 完了形と“失われた時間の意味”

「戻らない時間を、今の言葉で埋めていく」——完了形は、過ぎた時間と今の想いをつなぎ直す表現です。

Late Apologies

Mina: I’ve thought about reaching out so many times. But I’ve always stopped myself.

Souta: Why?

Mina: Because I’ve hurt you. And I’ve never properly apologized for that.

Souta: I’ve been carrying that silence too. For years now.

Mina: I know words can’t undo what I’ve done. But I’ve wanted to say I’m sorry for a long time.

Souta: You just did. And maybe… that’s enough for now.

ストーリー和訳

ミナ: 何度も連絡しようと思った。でもいつも思いとどまってしまってた。
ソウタ: どうして?
ミナ: あなたを傷つけたから。ちゃんと謝ったこと、なかったと思う。
ソウタ: 僕もその沈黙をずっと抱えてた。もう何年も。
ミナ: 言葉じゃ、やってしまったことは消せないけど…長いこと、謝りたかったの。
ソウタ: 今、ちゃんと伝わったよ。それだけで、今は十分かもしれない。

I’ve thought about reaching out so many times.
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前からチャンク理解

"I've thought about..."(何度も考えてきた)
→ "reaching out"(連絡をとることを)
→ "so many times."(何度も何度も)

ネイティブの感覚

`I've thought` は単なる「考えた」ではなく、「今の自分にも残っている思考の痕跡」。`so many times` によって、未実現の葛藤が強調される。

(補足)文法的な説明

`have + 過去分詞` に頻度表現を加えることで、反復されてきた内面の動きを現在まで引き伸ばす用法。

I’ve never properly apologized for that.
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前からチャンク理解

"I've never..."(私は一度もしていない)
→ "properly apologized"(きちんと謝ったことを)
→ "for that."(そのことについて)

ネイティブの感覚

`I've never ~` は「この瞬間に至るまで一度もしてこなかった」という“未解決の心残り”を表す強い完了形。`properly` がその悔いの度合いを補強する。

(補足)文法的な説明

現在完了の「経験」用法で、これまでに一度もないという“現在の事実”を強調。否定形と相性が良い。

I’ve wanted to say I’m sorry for a long time.
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前からチャンク理解

"I've wanted..."(ずっと望んできた)
→ "to say I'm sorry"(謝りたいと)
→ "for a long time."(長い間)

ネイティブの感覚

`I've wanted` は「過去の感情が今でも続いている」ことを完了形で表す。後悔や謝罪の表現とセットで使われると、過去の未解決な想いが浮き彫りになる。

(補足)文法的な説明

`have wanted to ~` は継続用法。現在まで持ち続けた感情や願望を示す。「言えなかった想い」を伝えるのに適している。