ページ86 完了形と“もう戻れない時間”

「あの時に戻りたい、でも戻れない」——完了形は、取り戻せない過去と、それを受け入れる現在を静かに描き出します。

Too Late to Return

Yui: I’ve passed by our old school this morning.

Ken: Really? It’s been years, hasn’t it?

Yui: Yeah… I’ve tried not to go that way. But today, I couldn’t help it.

Ken: Did it feel strange?

Yui: I’ve realized how much I’ve changed. And how much I’ve left behind.

Ken: Me too. We’ve grown up. But sometimes, I still wish we could walk those halls again.

ストーリー和訳

ユイ: 今朝、昔の学校の前を通ったんだ。
ケン: 本当? もう何年も経ってるよね。
ユイ: うん…できるだけ近づかないようにしてた。でも今日は、どうしても通ってしまった。
ケン: 変な感じだった?
ユイ: 自分がどれだけ変わったか、それに何を置いてきたかを実感したよ。
ケン: 僕も。大人になったんだな。でも、あの廊下をもう一度歩けたらって今でも思うよ。

I’ve passed by our old school.
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`have passed` × 記憶を呼び起こす瞬間
「昔の場所を通った」という行為が、過去を一気に引き戻してくる。その瞬間の“今”を意識するために完了形が使われている。

I’ve tried not to go that way.
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`have tried` × 避け続けた努力
過去を見ないようにしてきた“努力”が、今も続いている感覚。感情を押し込めてきた軌跡を完了形で語っている。

I’ve realized how much I’ve changed.
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完了形 × 自分自身の変化の実感
気づかないうちに変わっていた“自分”をふとした瞬間に自覚する。その今の気づきを支えるのが完了形。

We’ve grown up.
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`have grown` × 子ども時代の終わり
大人になったという“状態の変化”を、今現在の自分に反映させる文法として完了形が使われている。戻れない時間を受け入れる静けさがある。