第4章 期待値Expected Value ~平均してどれくらい期待できる?~
4-1: 期待値の計算方法
みんな、こんにちは!確率の計算にもだいぶ慣れてきたかな?これまでは、「サイコロで1が出る確率は?」とか「コインで表が出る確率は?」のように、ある出来事が「起こるか起こらないか」の確率、つまり起こりやすさの度合いを見てきたね。
今日から学ぶ「期待値Expected Value」は、ちょっと視点が違うんだ。「確率的な出来事の結果として、平均してどれくらいの『値』が得られると期待できるか」を考えるんだよ。
例えば、
- 「この宝くじ、1枚買ったら平均していくらくらい当たるんだろう?」
- 「サイコロを1回振ったら、出る目の平均っていくつになるんだろう?」
- 「ゲームでこの敵を倒したら、もらえる経験値は平均してどれくらいかな?」
こんな疑問に答えてくれるのが期待値なんだ。さっそく計算方法を見ていこう!
期待値Expected Value とは?
期待値とは、ある試行(サイコロ投げ、くじ引きなど)を行った結果として得られる数値について、その試行をものすごくたくさん繰り返したときに、得られるであろう数値の「平均値」のことだよ。
それぞれの結果が得られる「確率」を考慮に入れた、いわば「確率で重み付けされた平均値」なんだ。
記号では $E$ (Expected Valueの頭文字) で表すことが多いよ。
期待値の計算方法
ある試行の結果として得られる値が $x_1, x_2, \dots, x_n$ の $n$ 通りあって、それぞれの値が得られる確率が $p_1, p_2, \dots, p_n$ であるとき、その試行の期待値 $E$ は、次の式で計算できるんだ。
$E = (\text{値}_1 \times \text{確率}_1) + (\text{値}_2 \times \text{確率}_2) + \dots + (\text{値}_n \times \text{確率}_n)$
$E = x_1 p_1 + x_2 p_2 + \dots + x_n p_n = \sum_{i=1}^{n} x_i p_i$
つまり、「(得られる値)$\times$(その値が得られる確率)」を、考えられるすべての結果について計算して、全部足し合わせるんだね!
(ここで、$p_1 + p_2 + \dots + p_n = 1$、つまり確率の合計は必ず1になっているはずだよ。)
具体的な例で期待値を計算してみよう!
例題1:サイコロの出る目の期待値
1個の公正なサイコロを1回投げるとき、出る目の期待値 $E$ を計算してみよう。
- 得られる値 ($x_i$): 1, 2, 3, 4, 5, 6
- それぞれの確率 ($p_i$): すべて $\frac{1}{6}$ (同様に確からしいからね)
期待値の計算式に当てはめると…
$E = (1 \times \frac{1}{6}) + (2 \times \frac{1}{6}) + (3 \times \frac{1}{6}) + (4 \times \frac{1}{6}) + (5 \times \frac{1}{6}) + (6 \times \frac{1}{6})$
$E = \frac{1+2+3+4+5+6}{6} = \frac{21}{6} = \frac{7}{2}$
$E = 3.5$
答え: 3.5
解釈:
サイコロを振って実際に出る目は1から6の整数だけど、この試行を何度も何度も繰り返すと、出た目の平均値は3.5に近づいていく、と期待されるんだ。面白いね!
期待値は「確率で重み付けされた平均」。釣り合いの中心と見なせる。
例題2:くじ引きの賞金の期待値
全部で100本のくじが入った箱があります。賞と本数は以下の通りです。くじは1本100円で引けます。
- 1等:1000円 (1本) $\implies$ 当たる確率 $p_1 = \frac{1}{100}$
- 2等: 500円 (5本) $\implies$ 当たる確率 $p_2 = \frac{5}{100}$
- 3等: 100円 (10本) $\implies$ 当たる確率 $p_3 = \frac{10}{100}$
- はずれ: 0円 (残り $100-1-5-10 = 84$本) $\implies$ 確率 $p_4 = \frac{84}{100}$
問題: このくじを1本引いたとき、もらえる賞金の期待値 $E$ はいくらでしょう?
期待値の計算式に当てはめると…
$E = (\text{1等の賞金} \times P(\text{1等})) + (\text{2等の賞金} \times P(\text{2等})) + (\text{3等の賞金} \times P(\text{3等})) + (\text{はずれの賞金} \times P(\text{はずれ}))$
$E = (1000 \times \frac{1}{100}) + (500 \times \frac{5}{100}) + (100 \times \frac{10}{100}) + (0 \times \frac{84}{100})$
$E = \frac{1000}{100} + \frac{2500}{100} + \frac{1000}{100} + 0$
$E = 10 + 25 + 10 + 0 = 45$
$E = 45$ 円
答え: 45円
解釈と発展:
このくじを1本引くと、平均して45円の賞金がもらえると期待できる、ということだね。
でも、くじを買うのには100円かかるんだった。ということは、くじ1本あたりの「儲け」の期待値を考えると、
(儲けの期待値)=(賞金の期待値)-(くじの値段)= 45円 - 100円 = -55円
となる。マイナスだね!これは、平均すると1回あたり55円損することが期待される、ということ。もちろん、運が良ければ1000円当たるかもしれないけど、長い目で見ると損をする可能性が高い、と考えられるね。
例題3:ゲームの報酬の期待値
あるゲームで、手強いボスを倒すと、以下の確率でアイテムが手に入るとします。
- レアアイテムA(価値 500G):確率 $\frac{1}{10}$
- アイテムB(価値 100G):確率 $\frac{3}{10}$
- アイテムC(価値 10G):確率 $\frac{6}{10}$
(確率の合計は $\frac{1}{10} + \frac{3}{10} + \frac{6}{10} = \frac{10}{10} = 1$ になっているね!)
問題:このボスを1回倒したときに得られるアイテムの価値(ゴールド G)の期待値 $E$ はいくらでしょう?
$E = (\text{Aの価値} \times P(A)) + (\text{Bの価値} \times P(B)) + (\text{Cの価値} \times P(C))$
$E = (500 \times \frac{1}{10}) + (100 \times \frac{3}{10}) + (10 \times \frac{6}{10})$
$E = 50 + 30 + 6 = 86$
$E = 86$ G
答え: 86 G
解釈:
このボスを何度も倒していると、1回あたり平均して86ゴールド分の価値のあるアイテムが得られる、と期待できるわけだ。ゲームでどの敵を狩るのが効率的か、なんて考えるときにも使えそうだね。
期待値の注意点
期待値について、いくつか注意しておきたいことがあるよ。
- 期待値は「平均値」であって、1回の試行で実際に出る値とは限らない。
サイコロの目の期待値が3.5でも、実際に3.5の目が出ることはないよね。 - 期待値がプラスでも、毎回得するわけではない。
くじの例のように、期待値はあくまで長い目で見た平均値。個々の試行では、大きく得することも、損することもあるんだ。
期待値は、たくさんの試行を繰り返したときの「平均的な結果」を予測するのに役立つ指標だけど、1回1回の結果を保証するものではない、ということを覚えておこう!
期待値の計算方法、分かったかな? 次のページでは、この期待値が実生活でどのように使われているか、もう少し見てみよう!
このページで出てきたEnglish wordsとその仲間たち
英単語 (English) | 意味 (Meaning) | 例文 (Example Sentence) | 例文の読み上げ | 例文の日本語訳 |
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Expected Value | 期待値 | The expected value is the long-run average value of repetitions of the experiment it represents. | ▶ 再生 | 期待値とは、それが表す実験を繰り返した場合の長期的な平均値です。 |
Average / Mean | 平均、平均値 | The expected value is a type of average or mean. | ▶ 再生 | 期待値は平均の一種です。 |
Weighted Average | 加重平均 | Expected value can be thought of as a weighted average of the possible outcomes, where the weights are the probabilities. | ▶ 再生 | 期待値は、確率を重みとした、ありうる結果の加重平均と考えることができます。 |
Outcome Value | 結果の値 | Multiply each outcome value by its probability. | ▶ 再生 | それぞれの結果の値をその確率で掛けなさい。 |
Random Variable | 確率変数 | The outcome of a dice roll can be considered a random variable. (More details later!) | ▶ 再生 | サイコロを振った結果は確率変数と見なせます。(詳細は後ほど!) |
Probability Distribution | 確率分布 | The set of outcomes and their probabilities is called a probability distribution. (More details later!) | ▶ 再生 | 結果とその確率の組は確率分布と呼ばれます。(詳細は後ほど!) |