評論文対策問題 050(本文2倍・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
私たちはよく、「あの人の気持ちはわかる」と口にする。
だが本当に、他人の内面を理解することなどできるのだろうか。
相手の表情や言葉、過去の経験などから「こう感じているのだろう」と想像することはできる。
しかし、それはあくまで「自分から見た相手」であり、相手自身のままの姿ではない。
「わかったつもり」は、相手に寄り添っているようでいて、自分の想像を押しつけてしまうことにもなる。
真に理解しようとするとは、「わからなさ」を出発点にすることである。
自分と相手は違う、完全には重ならない――その前提を持ったとき、初めて相手の言葉に耳を澄ませることができる。
他者を理解するとは、情報を得ることではなく、距離を縮めすぎずに向き合い続ける姿勢なのだ。
理解の本質は、「知ること」ではなく「知ろうとし続けること」にあるのではないだろうか。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 他人の気持ちは表情や言葉で完全に把握できる。
- 相手の気持ちを理解するには、自分の経験を当てはめるのが最も有効である。
- 他人の内面を理解するには、想像を根拠に断定することが必要である。
- 他者理解は、できる限り距離を詰めて共感することに尽きる。
- 他者理解とは、相手の情報を集めることで自動的に成立する。
- 「わかったつもり」ではなく、「わからなさ」から出発することが大切である。
- 理解とは、すでに持っている知識を相手に当てはめることで達成される。
- 他者の立場に立つことは不可能であるため、理解は無意味である。
- 理解とは、完全に一致することを目指す営みである。
- 他者との距離を意識し続けることが、真の理解につながる。
【正解と解説】
正解:6(と10)
- 選択肢1:× 表情や言葉だけでは「自分から見た相手」にすぎないとされている。
- 選択肢2:× 自分の経験を当てはめることは「押しつけ」になりかねないとされる。
- 選択肢3:× 想像による断定が問題視されている。
- 選択肢4:× 距離を詰めすぎるよりも「詰めすぎない姿勢」が重要とされている。
- 選択肢5:× 情報を集めるだけではなく「向き合い続ける姿勢」が鍵とされる。
- 選択肢6:◎ 「わからなさを出発点にする」→本文の中心主張。
- 選択肢7:× 持っている知識を当てはめることへの警鐘が鳴らされている。
- 選択肢8:× 理解は「不可能」と切って捨てるのではなく「続ける姿勢」が重視される。
- 選択肢9:× 一致を目指すよりも「重ならない前提」への意識が強調される。
- 選択肢10:◎ 「距離を縮めすぎずに向き合う」=理解の本質として明記される。
語句説明:
わかったつもり:理解したと思い込んでしまい、相手との違いに気づかなくなる状態。
【本文の英訳】
We often say, “I understand how they feel.” But can we truly grasp someone else’s inner world? We can imagine their emotions from their expressions or stories, but that’s only our interpretation. It’s not the same as seeing them as they truly are. Thinking we understand may actually prevent us from really listening. Real understanding begins with recognizing what we do not know. When we accept that others are different and not fully knowable, we begin to listen more deeply. Understanding others means not closing the distance too quickly, but continuing to engage sincerely. True understanding lies not in “knowing,” but in the ongoing effort to understand.