SVG vs Canvas - どっちを使う？最終比較！
これまでSVGの様々な機能を探求する中で、しばしばCanvasとの比較に触れてきました。どちらもウェブ上でグラフィックを描画するための強力な技術ですが、その仕組みや得意なことは大きく異なります。この最終章では、SVGとCanvasの特性を改めて整理し、どのような場面でどちらの技術を選択するのがより適切なのか、具体的な判断基準を深く考察していきます。
この比較を理解することで、あなたのプロジェクトに最適なグラフィック技術を選択する手助けとなるでしょう。
基本的な違いの再確認
まず、SVGとCanvasの根本的な違いをおさらいしましょう。
- SVG (Scalable Vector Graphics):
- XMLベースのマークアップ言語で、図形を「宣言的」に記述します。
- 各図形はDOM (Document Object Model) の一部としてオブジェクトとして存在し、個別に操作（スタイリング、変形、イベント処理）が可能です。
- ベクターグラフィックなので、どれだけ拡大・縮小しても画質が劣化しません。
- Canvas (
<canvas>要素):- JavaScriptを使ってピクセル単位で「手続き的」に描画を行うAPIです。
- 固定サイズの描画領域（ピクセルバッファ）を持ち、一度描画された内容は単なるピクセルの集まりとなります。個々の「図形」をオブジェクトとして後から操作するのは困難です（再描画が必要）。
- ラスターグラフィックなので、描画後に拡大するとぼやけたりギザギザになったりすることがあります。
詳細比較表: SVG vs Canvas
以下の表で、様々な観点からSVGとCanvasを比較してみましょう。
| 特徴 | SVG (スケーラブル・ベクター・グラフィックス) | Canvas (<canvas> 要素) |
|---|---|---|
| 描画モデル | 宣言的 (XMLで図形を記述・定義) | 手続き的 (JavaScriptで描画命令を実行) |
| 基本形式 | ベクター形式 (数式ベースで線や形を表現) | ラスター形式 (ピクセルベースで描画) |
| 解像度依存性 | なし (スケーラブルで、どんな解像度でもシャープ) | あり (拡大するとピクセルが目立ち、荒れる可能性。高解像度対応には工夫が必要) |
| DOMとの関係 | 各グラフィック要素がDOMノードとして存在。DOM操作可能。 | <canvas>要素自体は単一のDOMノード。描画内容はDOMとは独立。 |
| イベント処理 | 各図形要素に直接イベントリスナー (click, mouseover等) を付加可能。 | Canvas要素全体にイベントリスナーを付加し、クリックされた座標などから対象物を特定するロジックを自前で実装する必要あり。 |
| テキストレンダリング | <text>要素で高品質なベクターテキスト。選択可能、検索エンジンにも認識され、アクセシブル。 |
JavaScriptのfillText()やstrokeText()で描画。ピクセル化されるため、選択不可、検索エンジンにも認識されにくい。 |
| アクセシビリティ(a11y) | 構造的マークアップとテキストにより比較的高い。<title>, <desc>, ARIA属性でさらに向上可能。 |
本質的に低い（単なるピクセルの集まり）。代替コンテンツやARIA属性での補足が強く推奨される。 |
| CSS/スタイリング | CSSやプレゼンテーション属性で容易にスタイリング可能。ホバーエフェクトなどのインタラクションもCSSで対応可能。 | JavaScriptでfillStyle, strokeStyleなどのコンテキストプロパティを設定してから描画。CSSはCanvas要素自体のスタイリングにのみ有効。 |
| アニメーション | SMIL, CSSアニメーション/トランジション, JavaScript (DOM操作, Web Animations API, ライブラリ) | JavaScript (フレームごとの再描画, Web Animations API, ライブラリ) |
| パフォーマンス | 要素数が非常に多い場合や、複雑すぎるパス、フィルターの多用は描画負荷が高まる傾向。DOM操作もコストがかかることがある。 | 大量の単純な図形の高速描画やピクセル単位の操作、頻繁な再描画は得意な場合が多い。シーンが非常に複雑な場合はやはり遅くなる。 |
| API | DOM API, SVG特有のAPI (例: SVGMatrix, SVGPathSegListなど、一部非推奨化も) |
Canvas 2D Context API (getContext('2d'))。または WebGL API (getContext('webgl')) で3Dグラフィック。 |
| ファイルサイズ | 単純なベクター図形は小さい。パスデータが非常に複雑になると増大。テキストベースなのでGZIP圧縮が効果的。 | 描画命令のJavaScriptコードサイズに依存。Canvasの内容を画像として保存する場合は、その画像形式と解像度に依存。 |
| 印刷品質 | 非常に高い（解像度に依存しないベクターなので）。 | 描画時の解像度に依存する。高解像度で描画すれば印刷品質も上げられる。 |
| デバッグ | ブラウザのDOMインスペクタで各要素の構造や属性を確認可能。 | 描画結果が全て。デバッグは主にJavaScriptコードとコンソールで行う。ピクセル単位のデバッグは難しい。 |
ユースケース別 使い分け判断基準
どちらの技術を使うべきか、具体的な用途ごとに考えてみましょう。
- ロゴ、アイコン、イラストレーション:
➡️ SVG が適しています。理由: スケーラビリティ（様々なサイズで鮮明）、ファイルサイズが比較的小さい、CSSやJavaScriptでの制御が容易、アクセシビリティ。 - インタラクティブな地図やグラフ、データビジュアライゼーション:
➡️ SVG が多くの場合適しています。理由: 個々の要素（地域、棒グラフのバーなど）をDOMオブジェクトとして扱え、イベント処理や情報付加が容易。D3.jsのようなライブラリはSVGをベースにしています。ただし、データポイントが極端に多い（数十万以上など）場合はCanvasも検討。 - 小規模なウェブゲームやシンプルなアニメーション:
➡️ SVG (SMIL, CSSアニメーション, 簡単なJS) または Canvas (簡単なJS) のどちらでも可能。手軽さや求めるインタラクションの度合いで選択。 - 複雑なゲーム、リアルタイムグラフィック処理、高度な物理シミュレーション:
➡️ Canvas (特にWebGLと組み合わせる) が適しています。理由: 高速な描画ループ、ピクセル単位の制御、ハードウェアアクセラレーションの活用。 - 写真のようなラスター画像の加工・編集、エフェクト適用:
➡️ Canvas が適しています。理由: ピクセルデータへの直接アクセスと操作が可能。 - ユーザーインターフェース (UI) 要素、コントロール部品:
➡️ SVG が適しています。理由: スタイリングの柔軟性(CSS)、スケーラビリティ、アクセシビリティ、イベント処理の容易さ。 - 印刷物用の高品質なグラフィック:
➡️ SVG が最適です。理由: 解像度に依存しないベクター形式であるため、どんなサイズで印刷しても鮮明。
最終的には、プロジェクトの要件（パフォーマンス、インタラクティビティの度合い、スケーラビリティの必要性、アクセシビリティ要件、開発のしやすさなど）を総合的に判断して技術を選択することが重要です。
コード例: 単純な赤い四角を描く
SVG
<svg width="100" height="100">
<rect x="10" y="10" width="80" height="80" fill="red"/>
</svg>Canvas
<canvas id="myCanvas" width="100" height="100"></canvas>
<script>
const canvas = document.getElementById('myCanvas');
const ctx = canvas.getContext('2d');
ctx.fillStyle = 'red';
ctx.fillRect(10, 10, 80, 80);
</script>SVGはHTML/XMLライクな宣言的な記述、CanvasはJavaScriptによる手続き的な描画命令という違いがよく分かりますね。
Did you know? It's possible to draw SVG content onto a Canvas. You can render an SVG image (e.g., from an external file or an inline SVG string) onto a 2D canvas context using `ctx.drawImage(svgImageElement, dx, dy)`. This can be useful for effects, exporting Canvas content that includes vector assets, or when you need a pixel-based snapshot of SVG content.
知っていましたか？SVGのコンテンツをCanvasに描画することも可能です。SVG画像（例えば外部ファイルやインラインのSVG文字列から作成したImageオブジェクト）を、ctx.drawImage(svgImageElement, dx, dy) を使って2D Canvasコンテキスト上にレンダリングできます。これは、エフェクトを加えたり、ベクターアセットを含むCanvasコンテンツを書き出したり、SVGコンテンツのピクセルベースのスナップショットが必要な場合に役立ちます。
まとめとサイト全体の振り返り
SVGとCanvasは、それぞれ異なる特性と強みを持つWebグラフィック技術です。SVGは宣言的でDOMと統合されたベクターグラフィックであり、スケーラビリティ、アクセシビリティ、CSS/JSによる個別操作に優れています。一方、Canvasは手続き的なピクセルベースの描画APIで、大量描画やリアルタイム処理、ピクセル操作に長けています。
どちらか一方が常に優れているわけではなく、プロジェクトの目的や要件に応じて最適なツールを選択することが肝心です。時には、両者を組み合わせて使うことで、それぞれの利点を最大限に活かすことも可能です。
この「SVGマスターへの道」サイトを通じて、SVGの基本的な概念から、図形の描画、スタイリング、変形、アニメーション、インタラクション、そして高度なテクニックまで、幅広く学んでいただけたなら幸いです。SVGは非常に奥深く、表現力豊かな技術です。ここで得た知識が、皆さんの今後のウェブ制作やデザイン活動において、創造性を刺激し、より良いユーザー体験を生み出す一助となることを心から願っています。
これでSVGマスターへの道の主要な学習は一区切りです。更なる探求のために、最後のページ「もっと深く！- 次のステップへ」で、参考になるリソースやツールを紹介します。
このページの要約
日本語
SVGはXMLベースの宣言的なベクターグラフィックで、DOMと連携し、スケーラブルでアクセシブルです。一方、CanvasはJavaScriptでピクセルを描画する手続き的なラスターグラフィックで、リアルタイム処理や大量描画に強いです。SVGはロゴ、図表、UIに適し、Canvasはゲームや画像処理に適しています。イベント処理、スタイリング、アニメーション、パフォーマンス特性も異なります。プロジェクトの要件に応じて適切な技術を選択することが重要で、時には両者を組み合わせることも有効です。
English
SVG is an XML-based, declarative vector graphics format that integrates with the DOM, offering scalability and accessibility. Canvas, on the other hand, is a procedural raster graphics API that uses JavaScript to draw pixels, excelling in real-time processing and rendering large numbers of objects. SVG is suitable for logos, charts, and UI, while Canvas is better for games and image manipulation. They also differ in event handling, styling, animation, and performance characteristics. Choosing the right technology depends on project requirements, and sometimes combining them is effective.
Español
SVG es un formato de gráficos vectoriales declarativo basado en XML que se integra con el DOM, ofreciendo escalabilidad y accesibilidad. Canvas, por otro lado, es una API de gráficos rasterizados procedural que usa JavaScript para dibujar píxeles, destacando en el procesamiento en tiempo real y la representación de grandes cantidades de objetos. SVG es adecuado para logotipos, gráficos e interfaces de usuario, mientras que Canvas es mejor para juegos y manipulación de imágenes. También difieren en el manejo de eventos, estilos, animación y características de rendimiento. Elegir la tecnología adecuada depende de los requisitos del proyecto y, a veces, combinarlas es efectivo.
中文
SVG 是一种基于 XML 的声明式矢量图形格式，它与 DOM 集成，提供可伸缩性和可访问性。另一方面，Canvas 是一个使用 JavaScript 绘制像素的过程式光栅图形 API，在实时处理和渲染大量对象方面表现出色。SVG 适用于徽标、图表和用户界面，而 Canvas 更适合游戏和图像处理。它们在事件处理、样式设置、动画和性能特征方面也有所不同。选择正确的技术取决于项目需求，有时将两者结合起来也很有效。