1 5-3. 論述特訓講座 - ウルトラ先生の江戸時代マスターへの道

ウルトラ先生の江戸時代マスターへの道

5-3. 論述特訓講座 - 思考を編み、歴史を語る、合格答案作成術

さあ、東大日本史攻略の山場、「論述問題」の対策講座へようこそ! 君がこれまで蓄えてきた知識、史料から読み解いた情報、そして多角的に物事を考える思考力。それら全てを結集し、設問の意図に的確に応える「合格答案」を編み上げる技術を、この講座で徹底的に鍛え上げていくぞ。

東大の論述問題は、単に「知っていること」を書けば良いというものではない。問われているのは、歴史事象の背景や因果関係、あるいはその歴史的意義を、論理的に構成し、指定された字数の中で、かつ指定語句を効果的に用いて、採点者に分かりやすく説明する能力だ。これは、一朝一夕に身につくものではなく、正しいアプローチと反復練習が不可欠となる。この講座で、その極意を掴み取ろう!

 

1. 東大日本史 論述問題のパターンと特徴(再確認)

まずは、敵の姿を再確認だ。過去問分析でも触れたが、東大の論述問題にはいくつかの典型的なパターンと特徴がある。

  • 字数制限の多様性: 60字程度の短いものから、120字~150字、時にはそれ以上のものまで様々。字数に応じて、盛り込むべき情報量や詳しさが変わってくる。
  • 設問の要求の多様性:
    • 説明型: 特定の歴史用語、制度、事件などについて、その内容や背景、意義を説明させる。(例:「○○について、△△という語句を用いて説明しなさい」)
    • 比較型: 二つ(あるいは三つ以上)の事象や制度、人物などを比較し、共通点や相違点、それぞれの特徴を述べさせる。(例:「AとBを比較し、その相違点をCという観点から述べなさい」)
    • 因果関係分析型: ある出来事がなぜ起こったのか(原因)、あるいはその結果として何が起こったのか(影響)を論じさせる。(例:「Xという事件が起こった要因を、YとZに触れながら説明しなさい」)
    • 評価・考察型: 特定の歴史的事象や政策について、その歴史的意義、肯定的側面と否定的側面、あるいは問題点などを多角的に考察させる。(例:「Dという政策の歴史的意義を、EとFの視点から評価しなさい」)
    • 史料活用型: 提示された史料に基づいて、上記のいずれかの形式で論述する。史料読解力と論述力が融合して問われる。
  • 指定語句の使用義務: ほとんどの論述問題で、いくつかの「指定語句」が与えられ、それらを全て、かつ文脈に即して効果的に用いることが求められる。

2. 論述答案作成の基本ステップ:合格へのロードマップ

どんな論述問題にも通用する、基本的な答案作成のステップを伝授しよう。この手順を意識するだけで、格段に質の高い答案が書けるようになるはずだ。

論述答案作成ステップ ①設問分析(何が問われているか) ②情報整理(何を書くか) ③構成組立(どう書くか) ④執筆(表現) ⑤推敲(最終確認) 論述答案作成の5ステップ
  1. ステップ1:設問の徹底分析
    • 問題文を一字一句丁寧に読み、「何が問われているのか(設問の核心)」を正確に把握する。主語、述語、目的語、疑問詞(なぜ、どのように、どういう点か、比較せよ、説明せよ、論ぜよ、など)に注目。
    • 解答に盛り込むべき要素(原因、結果、背景、影響、意義、比較点など)をリストアップする。
    • 字数制限指定語句を必ず確認し、マーキングする。
  2. ステップ2:知識の想起と情報の整理
    • 設問に関連する歴史的知識(時期、人物、事件、制度、社会状況、思想的背景など)を、自分の頭の中から可能な限り引き出す(ブレインストーミング)。
    • 指定語句をどのように文脈に組み込むか、どの知識と関連付けるかを考える。指定語句は解答の重要な骨子となることが多い。
    • 史料が提示されている場合は、史料から読み取れる情報と、自分の持つ知識とを照合し、整理する。史料のどの部分を根拠として使うかを考える。
  3. ステップ3:論理構成の組み立て(答案の設計図作成)
    • 集めた情報や要素を、どのような順序で、どのような論理の流れで記述するか、答案全体の構成(アウトライン)を考える。これが最も重要!
    • 字数制限を常に意識し、どの情報にどれだけの字数を割くか、全体のバランスを考慮する。重要なポイントは手厚く、そうでないものは簡潔に。
    • 基本的な構成として、「序論(問題提起・結論の方向性)→本論(具体的な説明・分析・根拠提示)→結論(まとめ・総括)」といった流れや、「起承転結」を意識すると、まとまりの良い文章になりやすい。比較問題なら、比較の観点を明確にする。因果関係なら、原因→経過→結果の流れを明確に。
    • この段階で、簡単なメモやキーワードの配置図を作ると良い。
  4. ステップ4:実際の執筆
    • 組み立てた構成に基づいて、明確かつ簡潔な言葉遣いで文章を書いていく。曖昧な表現や、持って回った言い方は避ける。
    • 指定語句を、文法的に正しく、かつ文脈上自然な形で組み込む。無理やり詰め込んだ感じにならないように。
    • 歴史用語は正確に用いる。人名・事件名・制度名などの漢字ミスにも注意。
    • 因果関係(「~のため」「その結果」)、対比関係(「一方」「しかし」)、付加・列挙(「また」「さらに」)などを明確に示す接続詞を効果的に使うことで、論理の流れがスムーズになる。
    • 一文をなるべく短くし、主語と述語の関係を明確にする。修飾語は必要なものだけに絞る。
  5. ステップ5:推敲・最終チェック
    • 書き終えたら必ず見直し、誤字・脱字、歴史的事実の誤りがないかを確認する。
    • 指定語句を全て使用しているか、再度チェックする。下線を引くなど、指示がある場合は忘れずに。
    • 字数制限をオーバーしていないか、あるいは極端に不足していないかを確認する。
    • 設問の要求に的確に答えているか、論点がずれていないかを再確認する。
    • 文章全体の論理の流れは自然か、分かりにくい部分や冗長な部分はないか、より良い表現はないか、といった観点から推敲する。

3. 高得点を狙うための論述テクニックと注意点

基本ステップを踏まえた上で、さらに答案の質を高め、高得点を狙うためのテクニックと、陥りやすい注意点を知っておこう。

高得点に繋がるテクニック

  • 多角的な視点の導入: 一つの事象を、政治的側面だけでなく、経済的、社会的、文化的側面など、複数の角度から光を当てて分析することで、答案に深みが増す。
  • 歴史的背景の的確な明示: なぜその出来事がその特定の時期に起こったのか、その背景にある時代状況や先行する出来事との関連を明確に示すことで、歴史の流れを理解していることをアピールできる。
  • 比較・対照の有効活用: 類似の事象(例:他の改革)や、異なる時代の同様の事象と比較・対照することで、問われている事象の特徴や意義をより鮮明に浮き彫りにすることができる。
  • 歴史的意義・影響への言及: その出来事が、その後の歴史にどのような影響を与えたのか、あるいは歴史の大きな流れの中でどのような位置づけにあるのか、といった歴史的意義にまで踏み込んで言及できると、評価は高まる。
  • 具体的な史実や事例の提示: 抽象的な議論や一般論に終始せず、具体的な歴史的事実や事例を根拠として示すことで、論述の説得力が格段に増す。(ただし、字数制限とのバランスに注意)

陥りやすいワナ・減点ポイント

  • 設問の読み間違い・要求からの逸脱: 最も致命的。何が問われているのかを正確に把握することが全ての出発点。
  • 歴史的事実の誤認・知識不足: 人名、事件名、年代、制度内容などの基本的な知識の誤りは大きな減点対象。
  • 指定語句の不使用・不適切な使用: 指定語句を全て使っていない、あるいは文脈と無関係に無理やり使っているのはNG。
  • 字数制限の大幅なズレ: 大幅な字数不足は論点不足と見なされ、字数オーバーは当然減点。
  • 論理構成の破綻・結論の不明確さ: 話があちこちに飛んだり、結局何が言いたいのか分からなかったりする文章は評価されない。
  • 単なる知識の羅列: 関連する知識をただ並べただけで、設問に対する分析や考察、あるいは論理的なつながりが見られない答案。
  • 曖昧な表現・冗長な記述・悪筆: 採点者に意図が伝わらない表現や、くどくどしい文章、そして判読困難な文字は避けるべき。

4. 実践演習:論述問題に挑戦! (江戸時代テーマ)

(※著作権に配慮し、問題文の全文掲載は控えます。あくまで出題の趣旨と解答の方向性を示すものです。実際の過去問や問題集で、類題に取り組んでみてください。)

例題1:幕藩体制の確立期における大名統制策について

設問の趣旨: 江戸幕府初期(例:家康~家光期)における主要な大名統制策を挙げ、それらが幕藩体制の確立にどのように寄与したのかを、指定語句(例:武家諸法度、参勤交代、改易)を全て用いて説明しなさい。(120字程度)

思考プロセス例:

  1. 設問分析: 時期は「初期」、対象は「大名統制策」、問われているのは「内容」と「幕藩体制確立への寄与」。指定語句あり。
  2. 情報整理: 初期の大名統制策→武家諸法度(内容:城普請制限、婚姻制限など)、参勤交代(妻子江戸住、経済的負担)、一国一城令、改易・転封・減封。これらがどう確立に繋がったか?→反乱防止、幕府権威強化、財政力削ぎ。
  3. 構成組立: ①武家諸法度で行動を規制 ②参勤交代で忠誠と財政負担 ③改易で恐怖政治と権威確立 → これらにより幕府中心の支配体制が固まった、という流れ。
  4. 執筆 & 推敲: 指定語句を自然に盛り込み、字数内にまとめる。

解答骨子例:
江戸幕府は初期に、武家諸法度で大名の行動を厳しく規制し、参勤交代を制度化して財政的負担と江戸への服属を強いた。また、違反した大名や潜在的な敵対勢力に対しては改易などの厳しい処分を断行することで、幕府の絶対的権威を確立し、長期安定的な幕藩体制の基礎を固めた。

例題2:商品経済の発展が農村社会に与えた影響について

設問の趣旨: 江戸時代中期以降の商品経済の発展が、農村社会の構造や農民の生活にどのような影響を与えたのか、プラス面とマイナス面の両方から説明しなさい。(90字程度)

思考プロセス例:

  1. 設問分析: 対象は「商品経済の発展が農村に与えた影響」、時期は「中期以降」、要求は「プラス面とマイナス面の両方」。
  2. 情報整理: プラス面→商品作物栽培による現金収入増、生活向上(一部)、在郷商人の出現。マイナス面→階層分化(地主と小作人)、土地喪失、金肥購入など現金支出増、村方騒動。
  3. 構成組立: ①プラス面を簡潔に ②マイナス面(特に階層分化)を具体的に、という流れ。

解答骨子例:
商品経済の発展は、農村に商品作物の栽培を広げ一部農民に富をもたらした(プラス面)。一方、土地の集積と喪失が進み、地主と小作人への階層分化を促進し、村内の対立や貧困も生んだ(マイナス面)

(今後、さらに多様なテーマの論述問題例と、詳細な添削ポイントを追加していく予定だ!)

5. 論述力を継続的に高めるために:日々の精進

論述力は、一朝一夕に完成するものではない。日々の地道な努力と工夫が、着実に君の力を高めていく。

  • とにかく書く習慣をつける: 過去問や問題集の論述問題に、時間を計って数多く挑戦する。最初はうまく書けなくても、とにかく最後まで書き上げる経験を積むことが大切。
  • 書いた答案は必ず見直し、添削を受ける: 自分の答案を客観的に見直し、改善点を見つける。可能であれば、学校や予備校の先生、あるいは信頼できる友人などに読んでもらい、具体的なフィードバック(添削)を受けるのが最も効果的だ。
  • 模範解答から学ぶ: 質の高い模範解答は、論理構成、表現方法、指定語句の使い方など、多くの点で参考になる。ただし、丸暗記するのではなく、「なぜこのような構成・表現になっているのか」を考えながら分析的に読むこと。
  • 歴史書や質の高い解説記事を読む: 歴史学者や専門家が書いた文章に触れることで、論理的な文章構成や適切な歴史用語の使い方、そして歴史事象に対する深い洞察力を学ぶことができる。
  • 「自分の言葉で説明する」習慣: 学んだ歴史的事象や概念を、家族や友人に、あるいは自分自身に対して「自分の言葉で説明してみる」という練習は、理解を深め、表現力を養う上で非常に有効だ。
【学術的豆知識】東大論述で「指定語句」が課される意味とは?

東大日本史の論述問題で特徴的なのが、「指定語句」の使用義務だ。これは単に受験生の語彙力を試しているだけではない。多くの場合、指定語句は、その問題で論じるべき重要な歴史的要素や概念、あるいは論理の骨格となるキーワードを示唆しているんだ。つまり、出題者は、これらの語句を的確に理解し、それらを相互に関連付けながら論理的な説明を構築できるかどうかを見ている。だから、指定語句をただ文中に登場させるだけでなく、それぞれの語句が持つ歴史的意味を正確に捉え、設問の文脈の中で有機的に結びつけて使うことが、高得点への鍵となる。指定語句は、君の思考を導く「道しるべ」でもあるんだ。

(Click to listen) A characteristic feature of essay questions in the University of Tokyo's Japanese history exam is the requirement to use "specified terms." This is not merely testing the examinee's vocabulary. In many cases, these specified terms suggest crucial historical elements, concepts, or keywords that should form the backbone of the argument for that question. In other words, the examiners are looking to see if students can accurately understand these terms and logically construct an explanation by organically connecting them within the context of the question. Therefore, not just simply including the specified terms in the sentences, but accurately grasping the historical meaning of each term and using them in a contextually and organically linked manner is key to a high score. Specified terms are also "guideposts" to direct your thinking.

This Page's Summary in English (Click to expand and listen to paragraphs)

This page, "Essay Writing Masterclass," provides intensive training for tackling the challenging essay questions in the University of Tokyo's Japanese history exam. Mastering essay writing is crucial for translating historical knowledge and analytical skills into high-scoring answers.

The University of Tokyo's essay questions vary in length and type (e.g., explanatory, comparative, cause-and-effect analysis, evaluative, source-based) and almost always require the use of specified terms. A systematic approach to essay writing involves five key steps: 1. Thoroughly analyze the question to understand exactly what is being asked. 2. Recall relevant knowledge and organize information, considering how to use specified terms. 3. Structure the essay logically (e.g., introduction, body, conclusion), keeping word limits in mind. 4. Write clearly and concisely, using accurate historical terminology and effective connecting phrases. 5. Review and revise for errors, completeness, and clarity.

Techniques for high-scoring essays include incorporating multiple perspectives, clearly stating historical context, effectively using comparison and contrast, discussing historical significance and impact, and providing concrete historical evidence. Common pitfalls to avoid include misinterpreting the question, factual errors, improper use of specified terms, poor logical structure, and merely listing facts without analysis.

Practical exercises with sample Edo-period essay questions, along with analyses of thought processes and model answer outlines, are provided to illustrate these principles. Continuous improvement requires consistent practice, seeking feedback, studying model answers critically, reading scholarly works, and habitually explaining historical concepts in one's own words. Specified terms are not just vocabulary tests but guideposts indicating key elements and logical frameworks for the answer.


論述の奥義、少しは掴めただろうか? この講座で学んだことを武器に、数多くの問題に挑戦し、君自身の「歴史を語る力」を磨き上げていこう! 次は、学習をさらにサポートするためのインタラクティブなツールや、より深く学ぶための推薦図書などを紹介するぞ。

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