第2章 ビットコインはどう進化してきたの？～技術の歴史～
2-2. 人が増えて問題発生！スケーラビリティ問題
ビットコインが「ピザと交換できるじゃん！」と話題になったり、その革新的な技術に注目が集まったりして、だんだんと使う人や取引する人が増えてきたんだ。
でもね、たくさんの人が一度にビットコインを使おうとすると、ちょっと困ったことが起きてきた。それが「スケーラビリティ問題」だよ。
「スケーラビリティ」って言葉、難しいかな？簡単に言うと、「規模が大きくなっても、ちゃんとスムーズに動ける能力」のこと。例えば、小さなお店にたくさんのお客さんが一度に来ちゃうと、レジが大行列になってなかなかお会計できないよね？それと似たようなことが、ビットコインの世界でも起きてしまったんだ。
例えるなら…「ビットコイン交通渋滞」！
ビットコインの取引を「荷物を運ぶトラック」、ブロックチェーンを「高速道路」、ブロックを「一度に高速道路に乗れるトラックの集団」だと考えてみよう。
最初はトラックの数が少なかったから、高速道路はスイスイ流れていた。でも、ビットコインの人気が出て、荷物を運びたいトラック（取引）が急に増えちゃったんだ。ところが、高速道路には一度に入れるトラックの集団（ブロック）の大きさと、集団が出発する間隔（約10分）が決まっていた。さあ、どうなると思う？
何がそんなに問題だったの？ ～ビットコインの限界～
具体的に、ビットコインのスケーラビリティ問題は、こんな形で現れたんだ。
- 送金がめちゃくちゃ遅くなる！（取引の遅延）
ビットコインのブロックは、約10分に1回しか新しく作られない。そして、1つのブロックに入れられる取引のデータの量には、上限（当時は約1MB=メガバイト）があったんだ。だいたい、1秒あたりに処理できる取引の数は7件程度と言われていたよ。（クレジットカードのVISAは1秒に何千件も処理できるから、比べるとかなり少ないよね）
だから、取引したい人が増えれば増えるほど、ブロックに入れてもらうための順番待ちの列が長ーくなって、自分の取引が承認される（ブロックチェーンに記録される）までに、何時間も、ひどい時には何日も待たされることがあったんだ。「ビットコイン送ったんだけど、まだ届かないの？」なんて声がたくさん聞かれたよ。
- 手数料がものすごく高くなる！（手数料の高騰）
ブロックに記録できる取引の数に限りがあるから、マイナー（取引を承認してブロックを作る人たち）は、より高い手数料を払ってくれる取引を優先的にブロックに入れようとするようになるんだ。「早く処理してほしければ、もっとお金を払いなさい！」ってことだね。
その結果、ビットコインを送るための手数料が、送りたいビットコインの金額よりも高くなっちゃう、なんていう本末転倒な事態も起きた。例えば、100円のジュースを買うのに、手数料が500円もかかったら、誰もビットコインで買おうと思わないよね。
↑ 1MBのバス（ブロック）はすぐに満員。たくさんの取引が次のバスを待っているイメージ。
なぜこんな問題が起きたの？
このスケーラビリティ問題が特に深刻になったのは、2017年ごろのこと。この時期、世界中で暗号資産への注目が急速に高まり、ビットコインの価格も大きく上昇したんだ（いわゆる「仮想通貨バブル」だね）。
- ビットコインを使う人が急増: 新しくビットコインを始めたり、取引したりする人が世界中で爆発的に増えた。これには、純粋にビットコインの技術や将来性に期待した人もいれば、短期的な価格の上がり下がりで儲けようとする投機的な人もたくさんいたんだ。
- もともとの設計の限界: ビットコインは、「セキュリティ（安全性）」と「分散性（特定の管理者がいなくても動くこと）」を何よりも大切にして設計されている。例えば、ブロックのサイズをむやみに大きくしたり、ブロックが作られる時間を短くしたりすると、世界中のコンピューターがブロックチェーンの情報を正しく共有するのが難しくなって、安全性が下がったり、一部の強力なコンピューターを持つ人だけが有利になったりする（中央集権化が進む）危険性があったんだ。
つまり、ビットコインは「誰でも安全に使えること」を優先した結果、一度にたくさんの取引を高速で処理する能力には、もともと限界があったと言えるんだね。これが、利用者の急増によって一気に表面化したわけだ。
どんな影響があったの？
このスケーラビリティ問題は、ビットコインにとって大きな試練となったよ。
- 日常的な支払いには不向きに: 「少額のものを買うのに、手数料が高くて時間もかかるんじゃ、普段使いのお金としては使えないね」という意見がたくさん出た。ビットコインは「デジタルゴールド」つまり金の延べ棒みたいに「価値を保存しておく」のには向いているかもしれないけど、「毎日使うお財布の中の現金」の代わりにはなりにくい、という見方が強まったんだ。
- コミュニティでの大論争: 「この問題をどうやって解決するんだ！」と、ビットコインの開発者やユーザーのコミュニティでは、ものすごく白熱した議論が巻き起こった。
- 「単純にブロックのサイズを大きくすればいいじゃないか！」という意見（例えば2MBとか8MBとかに）。
- 「いや、ブロックサイズを大きくするのは危険だ。もっと別の賢い方法で解決しよう！」という意見。
ビットコインが世界に広がるためには、この「たくさんの人が使っても大丈夫」という能力を高めることが、避けては通れない課題になったんだね。
まとめ
ビットコインの人気が急上昇したことで、一度に処理できる取引の量に限界がある「スケーラビリティ問題」が大きな課題として立ちはだかった。
送金に時間がかかったり、手数料が異常に高くなったりして、ビットコインの使い勝手は一時的にとても悪くなってしまった。そして、この問題をどう解決するかで、コミュニティは大きく揺れたんだ。
でも、これでビットコインが終わったわけじゃない！この大きな壁を乗り越えるために、世界中の賢い開発者たちが、様々なアイデアを出し合い、新しい技術を開発していくことになるんだ。
次のページでは、このスケーラビリティ問題に対する具体的な解決策として登場した「セグウィット」や、もっとたくさんの取引を高速で処理するための切り札とも言われる「ライトニングネットワーク」について、詳しく見ていくよ！
Mamechishiki: What is TPS? (Click to see translation and listen)
TPS stands for "Transactions Per Second." It's a common metric used to measure the throughput of a payment system or a blockchain, indicating how many transactions can be processed in one second. Bitcoin's TPS is often cited as around 3-7, while major credit card networks like Visa can handle thousands of TPS. This difference highlights Bitcoin's scalability challenge for everyday payments.
意訳: TPSとは「Transactions Per Second」の略で、「1秒あたりのトランザクション数」を意味します。これは、決済システムやブロックチェーンの処理能力（スループット）を測るためによく使われる指標で、1秒間にどれだけの取引を処理できるかを示します。ビットコインのTPSはだいたい3～7程度と言われることが多いのに対し、VISAのような主要なクレジットカードネットワークは何千ものTPSを処理できます。この違いは、ビットコインが日常的な支払い手段として使われる上でのスケーラビリティの課題を浮き彫りにしています。
このページのまとめ (Summary, Resumen, 摘要)
Summary: As Bitcoin gained popularity, especially around 2017, it faced a "scalability problem": its capacity to handle a growing number of transactions was limited. This was due to the fixed block size (around 1MB) and block creation time (about 10 minutes), resulting in low throughput (around 3-7 TPS). Consequently, transaction confirmation times became very long, and fees skyrocketed as users competed for limited block space. This crisis led to debates within the community on how to scale, eventually leading to forks like Bitcoin Cash, and highlighted the need for solutions to improve Bitcoin's usability for more transactions.
Resumen: A medida que Bitcoin ganó popularidad, especialmente alrededor de 2017, enfrentó un "problema de escalabilidad": su capacidad para manejar un número creciente de transacciones era limitada. Esto se debió al tamaño de bloque fijo (alrededor de 1 MB) y al tiempo de creación de bloque (aproximadamente 10 minutos), lo que resultó en un bajo rendimiento (alrededor de 3-7 TPS). En consecuencia, los tiempos de confirmación de las transacciones se volvieron muy largos y las tarifas se dispararon a medida que los usuarios competían por el limitado espacio del bloque. Esta crisis generó debates dentro de la comunidad sobre cómo escalar, lo que finalmente condujo a bifurcaciones como Bitcoin Cash, y destacó la necesidad de soluciones para mejorar la usabilidad de Bitcoin para más transacciones.
摘要： 随着比特币的普及，特别是在2017年左右，它面临了“可扩展性问题”：其处理日益增长的交易数量的能力有限。这是由于固定的区块大小（约1MB）和区块创建时间（约10分钟）造成的，导致吞吐量较低（约3-7 TPS）。因此，交易确认时间变得非常长，并且由于用户争夺有限的区块空间，手续费飞涨。这场危机引发了社区内部关于如何扩容的辩论，最终导致了像比特币现金这样的分叉，并突显了改进比特币以处理更多交易的可用性的解决方案的需求。
日本語の要約： ビットコインの人気が高まるにつれ、特に2017年頃、取引処理能力の限界である「スケーラビリティ問題」に直面しました。これはブロックサイズ（約1MB）とブロック生成時間（約10分）が固定されているため、処理能力（約3～7TPS）が低かったことが原因です。結果として、取引の承認に非常に時間がかかり、限られたブロックスペースをユーザーが奪い合うため手数料が急騰しました。この危機はコミュニティ内でスケーリング方法に関する議論を引き起こし、最終的にはビットコインキャッシュのようなフォーク（分裂）を生み出し、より多くの取引に対応できるようビットコインの使いやすさを改善する必要性を浮き彫りにしました。